血便の原因で最も多いのは、痔(いぼ痔・切れ痔)ですが、最も注意が必要なのは大腸がんです。
大腸がんは日本人に増えているがんの一つで、初期にはほとんど自覚症状がありません。
そのため、「痔による出血だろう」と自己判断して受診が遅れ、進行した状態で発見されるケースも少なくありません。
また、大腸ポリープも血便の原因になることがあります。大腸ポリープの一部は、放置すると将来的に大腸がんへ進行する可能性があるため、内視鏡検査で見つかった場合は、その場で切除することが推奨されます。
このほかにも、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、大腸憩室出血、虚血性腸炎、感染性腸炎など、さまざまな病気が血便の原因となります。
大切なのは、血液の色や出血量だけでは原因を判断できないということです。真っ赤な血便でも痔とは限らず、少量の出血だからといって安心することもできません。実際に、痔と大腸がんが同時に見つかる患者さんも少なくありません。
血便が一度でもみられた場合は、自己判断せずに消化器内科を受診し、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受けることをおすすめします。原因を正確に調べ、必要に応じてその場でポリープ切除などの治療も行えるため、早期発見・早期治療につながります。
便潜血陽性の方は、大腸内視鏡検査を受けることが、命を守るための大切な一歩となります。痔の症状と自己判断し、大腸内視鏡検査を受けずに放置した結果、実際には大腸癌であったというケースがしばしば報告されています。自己判断だけでは、大腸がんの早期発見の機会を逃してしまう可能性があります。
実際に、便潜血陽性後に大腸内視鏡を受けなかった群は、受けた群に比べて大腸癌死亡リスクが約2倍以上と報告されています。
40歳を超えた方、便潜血反応が陽性の方に加え、大腸がんを否定できない下記のような方は、大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
過去の大腸内視鏡検査で見落とされた可能性のある 「post-colonoscopy CRC(PCCRC)」は、大腸癌全体のおおむね1〜数%台と報告されています。ただし、このPCCRCは右側大腸癌、女性、遺伝子変異陽性の割合が高いといった特徴を持つことが報告されており、単純な「見逃し」だけでなく、進行の早い大腸癌が一定割合存在する可能性も示唆されています。そのほか、痔核、憩室症、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、さらには服用薬の影響など、多様な出血源があるとされています。
以上をふまえ、大腸内視鏡検査を行うかどうかを主治医と相談するのがよいと思います。
便潜血検査で「陽性」と判定される人は約5%います。しかし、陽性だからといって大腸がんと決まったわけではありません。便潜血検査は、大腸がんの可能性がある人を見つけるためのスクリーニング検査です。
実際に大腸がんが見つかるのは、便潜血検査で陽性となった人の約3%程度です。受診者全体では約0.2%に過ぎません。
そのため、便潜血検査で陽性になっても過度に心配する必要はありませんが、大腸がんや大腸ポリープを早期に発見するために、大腸内視鏡検査を必ず受けることが大切です。
1.年齢・性別
40歳以上、男性(男女比は約1.2:1)
2.遺伝・家族歴
大腸がん・大腸ポリープの家族歴、遺伝性大腸がん(リンチ症候群・家族性大腸腺腫症)
3.生活習慣
赤身肉・加工肉の多い食事、食物繊維の不足、飲酒、喫煙、運動不足
4.既往歴
大腸ポリープの既往、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、2型糖尿病、肥満
メリット
デメリット
早期大腸がんの半分以上は便潜血検査では見つかりません。
そのため、大腸がんを早期発見する唯一の方法は、定期的に大腸内視鏡検査を受けることです。
大腸がんは小さいポリープから始まり、それが大きくなることで初めてがん化します。
つまり、定期的に検査を受けてポリープの段階で切除していれば、大腸がんで亡くなることはありません。
40歳を過ぎたら大腸カメラを定期的に受けましょう。
何もなければ2-3年に1回、ポリープを切除した場合は1年後に再検査を受けることをお勧めします。
大腸ポリープの切除は、大腸がんの予防につながります
大腸がんの中には、「腺腫」と呼ばれる良性のポリープから、時間をかけてがんへ進行するものがあります。そのため、大腸内視鏡検査で将来がんになる可能性のあるポリープを早期に発見し、適切に切除することが大切です。
大腸ポリープには、腺腫、過形成性ポリープ、若年性ポリープ、炎症性ポリープなど、さまざまな種類があります。
このうち、腺腫や早期がんは原則として切除の対象となります。また、過形成性ポリープの中にも、大きさや形、性質などによって切除が必要となるものがあります。
一方、すべてのポリープを切除する必要があるわけではありません。内視鏡でポリープの状態を詳しく観察し、将来の大腸がん予防につながるものを適切に判断して切除することが重要です。
① 大腸ポリープ切除術(ポリペクトミー)
主に茎のあるポリープなどを、内視鏡を使って切除する治療です。ポリープの大きさや形に応じて、適切な方法を選択します。
② 大腸粘膜切除術(EMR)
平坦なポリープや、茎のない比較的大きなポリープなどに行う治療です。ポリープの下に薬液を注入して病変を持ち上げ、安全性に配慮しながら切除します。
③ 内視鏡的止血術
大腸から出血している場合には、内視鏡で出血部位を確認し、必要に応じてクリップなどを用いた止血処置を行います。
大腸内視鏡検査自体はおおよそ10分程度です。
ポリープを切除する場合は、数と大きさによりますが、もう少し時間がかかることもあります。
鎮静剤使用時は、検査後のリカバリーに1時間ほどかかります。
大腸内視鏡検査は保険の対象となります。費用については、見るだけの検査なのか、組織を採取して調べる検査なのか、ポリープを切除するのかなど、内容によって異なります。
⇒ 大腸内視鏡検査の費用はこちら
妊娠中の内視鏡検査は難しいです。
授乳中の場合は麻酔を使わなければ検査は可能です。
なお、内視鏡検査後24時間授乳をやめられれば検査時の麻酔も可能です。
午前中に検査の場合、午後からの仕事は可能です。
午後からの検査の方は、お休みしていただくことをお勧めします。
薬の種類により異なるため、事前に医師への相談が必要です。
降圧薬(血圧を下げる薬)、心臓病の薬は通常通り服用し、検査当日も必ず服用してください。
抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)は、種類にもよりますので、診察時に必ずご相談ください。
糖尿病薬は、検査当日は原則休薬となります。
加工肉(ハムやソーセージ、ベーコンなど)は、食べ過ぎると大腸がんのリスクを高める可能性があることがわかっており、世界保健機関(WHO)の専門機関でも発がん性がある食品に分類されています。
ただし、少量をたまに食べる程度であれば、過度に心配する必要はありません。 大切なのは、毎日のようにたくさん食べ続けないことです。野菜や果物、食物繊維を一緒にとるなど、バランスのよい食事を心がけましょう。
また、食品に使われている添加物は国の安全基準に基づいて管理されていますが、気になる方は食品表示を確認し、加工食品ばかりに偏らない食生活を意識するとよいでしょう。
超加工食品とは、加工の程度が高く、そのまま、あるいは簡単な調理ですぐに食べられる食品のことで、たとえば次のようなものがあります。
TXI(Texture and Color Enhancement Imaging)は、わずかな色や形の違いを強調して、病変を見つけやすくする新しい内視鏡技術です。
国立がん研究センターが行った研究では、TXIを使用すると通常の内視鏡観察に比べて、見つけにくい平坦な大腸ポリープの発見率が高くなることが国際的に著明な医学雑誌「Gastroenterology」に報告されました。
大腸がんの多くは、大腸ポリープから発生すると考えられています。そのため、小さなポリープや見つけにくい病変を早期に発見し、適切に切除することが大腸がん予防につながります。
TXIは、大腸ポリープの「見逃し」を減らすことが期待される内視鏡技術ですが、当院では積極的に使用し検査を行っています。